はじめに
今回は2020年2月21日(金)に公開された、とにかく明るいホラー映画「ミッドサマー」の感想レビューになります。
(※この記事は映画「ミッドサマー」のネタバレ込みの感想になりますので、ネタバレが嫌いな人は注意してください。
とにかく不穏なホラー映画「ヘレディタリー/継承」で名をあげたアリ・アスター監督の長編映画第二作目「ミッドサマー」
2018年に公開された「ヘレディタリー/継承」では
死んだお婆ちゃんが遺した“あるもの”がヤバすぎて家族が大変な目に合っちゃう系ホラー
家長である祖母の死を切っ掛けにあらゆる怪奇現象、不幸に見舞われる一家のお話
ちなみに、タイトルの「Hereditary(ヘレディタリー)」は日本語では「遺伝的な」「親譲りの」「代々の」という意味があり
意訳的にはヘレディタリーは「親譲りの」といったニュアンスになります。
家族という一種の縛り(呪い)によって受け継げられる得体の知れない負の遺産の恐怖が
絶妙なカメラワークと気分が悪くなる音響(褒め言葉)で描かれています。
劇中流れるBGMは音楽単体で小学生が一人でトイレに行けなくなるレベルw
そして何より一家の一人娘チャーリーの顔が怖い怖い…
そんなチャーリーの癖の舌打ち「コッ」は本作で一番印象深くて不気味でしたw
とまあ、登場人物もストーリーも通して全体的に不穏で薄気味悪い「呪い相続」映画が「ヘレディタリー/継承」になります。
ですが今作の「ミッドサマー」では暗くて薄気味悪い前作「ヘレディタリー/継承」とは対照的に
明るくてニコニコなホラー映画になっています!
論文制作真っ只中な大学生5人組がスウェーデンの奥地ホルガと呼ばれるコミュニティで催される90年に一度の祝祭に訪れるストーリー
そして勿論、その祝祭はとんでもないお祭だった…
ホラーで時たま使われる手法の「笑ってる顔の方が一周回って逆に怖い現象」に加えて映画の舞台は終始「夜ではなく真昼間」という
このホラー映画の舞台を「真昼間」にするといった型破りな設定!
劇中起こる恐ろしい描写を暗闇でぼかすのではなく、昼間に映すことで登場人物含め視聴者に対して惨劇を直視させるやり口、全くもって卑怯。w
ではここから今作「ミッドサマー」の見どころ含めた感想になります。
見どころ1:主人公の女がメンヘラ
今作の「ミッドサマー」でまず語らねばいけない事が、主人公ダニー(フローレンス・ピュー)のメンヘラ具合いである。
劇中主人公のダニーは家族のいざこざから精神安定剤を使用する始末、さらには彼氏のクリスチャン(ジャック・レイナー)に依存気味なメンヘラ女
ただでさえ不安定なダニーに追い討ちをかけるように家族が無理心中?不慮の事故?で亡くなってしまいます。
ダニー意気消沈…
その後ほんの少しダニーは元気を取り戻すも、不意に家族の事を思い出す事で発作が起こり毎度トイレに駆け込みます。
(そんな可哀想なダニーを彼氏のクリスチャンは優しく慰めるも内心ダニーの事を快く思っていない状況…)
そして舞台となるボルガの村でダニーは調子の悪い状態で、勧められたマジックマッシュルームティーを飲みトリップするわで
案の定トリップ中に気分を悪くしたダニーは
幻覚と妄想でパニック発作!
ぶっ倒れてしまいます。
「おいおい大丈夫か、ダニーさんよ?w」
ここまでの一連の流れで描かれる、もう時期彼氏に捨てられそうなメンヘラ彼女の構図
捨てられたくない置いていかれたくないという気持ち一心で
無理して彼氏と友達の旅に同伴したり、勧められた麻薬でトリップしたりと彼氏に付いてくる面倒な彼女ダニーの姿は重く、さらに時折見せる彼女のヒステリックには見ていて少しイライラさせられますw
ダニー役のフローレンス・ピューのメンヘラ女役が板につき過ぎてて、危うくフローレンス・ピュー本人を嫌いになりかけました…
まあ、それくらいに名演だという事ですw
見どころ2 :コミュニティ「ホルガ」
今作の舞台となるスウェーデンの奥地に存在するコミュニティ「ボルガ」の村と人の美しさはまるで桃源郷
劇中ではホルガの人々は植物や動物を自給自足しのどかに暮らしている描写が映されています。
そしてみんなして笑顔^_^
「正直、美人で可愛いスウェーデン美女が沢山いるホルガに俺も移住したい!」
「仕事辞めてスウェーデンの奥地に住む!」
って思えちゃうレベル
でも実は…?
ホルガの実態は儀式と称した投身自殺を行う風習が存在したり、コミュニティの秘密を守るためなら殺人すら厭わない異常な集団であった。
またコミュニティ内の近親相姦を回避するために村の女性が外部の男の遺伝子を取り込む夜這い制度があったりなどなど
男からすれば普通にラッキースケベな
据え膳の儀式…
この儀式に勿論のことダニーの彼氏クリスチャンは巻き込まれますw
そしてクリスチャンは村の女性の一人に見初められ、ダニーが居ない間にクリスチャンはガッツリ浮気してしまう!
しかしこのラッキースケベはあくまでもコミュニティの儀式、クリスチャンと村の女性が交わってる周りでは思わず笑ってしまうよな光景が待ち構えていましたw
この場面は是非映画館で直接チェックしてもらいたい映画史に残る珍シーンです。
見どころ3:共感が持つパワー
見どころ1、見どころ2でダニーがメンヘラだの美女とガッツリ浮気だの冗談を言ってきたが一番自分が伝えたいのは
共感が持つパワー
についてだ。
映画序盤でメンヘラ女ダニーは家族を失う事でさらに心にぽっかりと穴が空いてしまいます
毎度発作に悩まされ辛い状況でも、どこか冷めたような態度のクリスチャン
そんなクリスチャンに愛想を尽かされないようにか、ダニーは劇中何度も必死で発作を堪えようとします。
愛する家族を失い、パートナーであるクリスチャンの関係もそれほど上手く噛み合わない中で
ダニーは彼がいながらも一人孤独 なよう。
そんな中クリスチャンの友達ペレからコミュニティ「ホルガ」へ招かれたダニー。
初めは全く未知の異文化に戸惑いを見せるダニーだが、ホルガの
「一人はみんなのために、みんなは一人のために」
の精神に次第に惹かれてゆきます。
そしてホルガの夏至祭において祭の女王を決める
「ダンス最後まで踊りきるスタミナゲーム」
で最後まで踊りきったダニーはあれよあれよで祭の女王としてコミュニティに受け入れられます。
ホルガの民「ダニーよ、今日から君は家族だ」
村人達の慣れない扱いにこれまた戸惑うダニーですが次第に「まんざらでもない」感じになっていくのでした。
その後ダニーは祭の女王の儀式の途中に消えたクリスチャンが心配になり、彼氏クリスチャンを捜索。
しかし見つけた彼は村の女性とセックス中!(据え膳の儀式中
これを目撃してしまったダニーはショックで感情が爆発、これでもかと泣き叫びますが
ダニーの泣き叫びをなだめにやってきたコミュニティの女達はなんとダニーと一緒に泣き叫び出したのでした!!
ダニー「うわ〜〜うわ〜〜うわ〜!(泣」
ホルガ女「あなたが泣いているのなら私たちも泣くわよ!」
一同「うわ〜〜うわ〜〜うわ〜!(泣」
それを見る俺「なんじゃこりゃ?ww」
まるで自分の事のように一緒に泣き叫び共感を示してくれる彼女らにダニーは心を解放します。
家族(ホルガ)の共感によってダニーは孤独から救われるのです。
この場面はめちゃくちゃ強烈w
心に傷を負い、唯一の心の支えであった彼氏を失ったダニーにはもはや
家族(ホルガ)
しか残されていません!
この終盤の場面で映画本編も残り15分
果たして祭りの女王となったダニーは?浮気したクリスチャンは一体どうなっちゃうんだ??
ミッドサマーネタバレ(簡単)
今作の映画「ミッドサマー」はスウェーデンの奥地にあるコミュニティ「ホルガ」の90年に一度のヤバイ夏至祭に参加した大学生5人(正確には4人)の悲劇を描いたホラー作品ですが
結論から言ってしまうと今作の「ミッドサマー」は
信仰宗教を扱ったカルトムービーでした。
美しく伝統を重んじるホルガ村の90年に一度の夏至祭の実態は
閉鎖的なカルト集団が行う「老人の口減らし」と「外部の新しい遺伝子を取り入れる」事を同時に担った非常に合理的な儀式だった。
この夏至祭に行く事を提案したクリスチャンの友人ペレ(ホルガ村出身者)は実はホルガの人材派遣エージェントで、村に新しい血をもたらす男性を連れてくる事を目的にしていたのです。
また劇中90年に一度の夏至祭で選ばれる女王の写真が何人も見受けられる描写から
90年に一度の夏至祭は全くの嘘っぱち
だという事が分かり、この夏至祭は割と頻繁に行われている事が判明します。
夏至祭は
不必要になる老人を始末して、外部の人間をコミュニティに誘い込み新しい遺伝子を取り入れる事が目的であり
本質は恐ろしいほどまでに冷酷で機械的です。
映画の結末では夏至祭のフィナーレとして9人の生贄を捧げる必要があり、生贄にはダニーと一緒に村に訪れた大学生の友達ももれなく生贄にw
また村の教えに狂信的な者などが自ら志願して生贄となりました。
そして最後の1人の生贄を選ぶのが
祭の女王!
ホルガはクジで選ばれた村の男性一人と、さっきまで浮気してた彼氏のクリスチャンどちらを生贄にするか選ぶようダニーに強いるのでした。
結果的に最後の一人の生贄として選ばれたのは
なんと
彼氏のクリスチャン!
クリスチャンは内臓を全てくり抜いた熊の皮を全身に被せられ、残り8人の生贄と一緒に小屋ごと燃やされてしまいます。
その光景を祭の女王として眺めるダニーの表情は笑顔でニチャリ( ◠‿◠ )
この最後のシーンにアリ・アスター監督は
「ダニーは狂気に堕ちた者だけが味わえる喜びに屈した。ダニーは自己を完全に失い、ついに自由を得た。それは恐ろしいことでもあり、美しいことでもある」
と述べているそうです。
いやいや、男視点でこの映画を見るとクリスチャン可哀想すぎるw
でもこの結末には男女で色々と見方が変わってきそうですね。
最後に
アリ・アスター脚本、監督の「ヘレディタリー/継承」に続いたホラー映画第二弾「ミッドサマー」
散々記事の方ではこの作品をホラー映画!ホラー映画!と述べてきましたが、ジャンルを正確にするとこの映画は
どちらかと言えば「サスペンススリラー」で間違いないと思います。
やってる事はオカルト地味た恐怖の儀式なんですが、別に幽霊とか怪物は一切登場しない人間の本質的な恐ろしさを映したスリラーなんですよねw
安直な言葉になってしまうけど
「結局人間が一番恐ろしい」
って事になってしまう。
けれど、それ以上にこんな優しい顔してドギツイ映画脚本を手がけるアリ・アスター監督が一番恐ろしいw
今作の「ミッドサマー」は「ヘレディタリー/継承」同様にアリ・アスター監督の実体験と失恋が元になっているそうです。
一体監督はどんな人生を今まで送ってきたんだ?と思ってしまうw
とまあ色々と語りましたが個人的には大満足な映画でした!
「ミッドサマー」に続いてアリ・アスター監督の今後の最新作なんかも随分期待ですw
以上、フカザワでした!